Blog ブログ

合唱の伴奏を上手に弾くには

学校合唱の伴奏を上手に弾くには

そろそろ秋になり、小学校や中学校で音楽祭、合唱祭などで合唱の伴奏を見事勝ち取った方、または今頑張って練習している方が多いと思います。
私の生徒さんでも、現在進行形で練習中です。

ゲルン音楽教室は歌とピアノの教室です。
ピアノの先生からの視点+歌の伴奏を生業としている私の伴奏者視点をプラスし、合唱の伴奏にスポットを当てて、どうしたら上手に弾けるか、どうしたら選ばれるか、を考えてみたいと思います。

基本的にいつも一人で弾いているピアニストは、指揮を見るのが苦手ですし、自分のペースで進めることが出来ず、誰かに合わせて演奏するという経験があまりないと思います。
私自信も指揮を見るのは未だに苦手です。

どうしたら指揮と歌を攻略できるでしょうか。

生徒さんが指揮者の場合

小学校中学校での合唱となると、指揮者は同じクラスの生徒さんが指揮することが多いでしょう。
音楽が得意な子が指揮することもありますが、残念ながら大抵は伴奏をするピアノの子の方が音楽やピアノが得意です。選ぶ先生もそれを見越して選んでいるでしょう。

その場合、指揮者はどうしてもピアノと合唱に合わせて指揮をしてしまうので、あまり当てになりません。
指揮者を当てにして、ずっと見ながら演奏するのは止めましょう。

指揮を見るところは、全員が合わせる肝心な場所のみ。
それ以外は、目線の端っこに指揮が動いてるなあ、と動きや拍子を感じるだけで、一拍一拍完全に指揮に合わせる必要はありません。ずっと見ている必要もありません。

むしろ伴奏がテンポを作ってあげてリードしてあげるくらいの気持ちでいましょう。

自分が指揮者になってください。
大黒柱は伴奏者です。
歌っている合唱の方々は、基本は耳から聞こえる伴奏に合わせて歌ってしまいますし、指揮者をちゃんと見て合わせるのは、肝心な所だけだと思います。

指揮を当てにしすぎず、合わすところは合わせ、それ以外は自信を持ってどっしりと構えて演奏しましょう。

音楽の先生が指揮をする場合

音楽の先生が指揮をする場合は、少し変わってきます。
練習時に先生の動きや、どうして欲しいということを良く聞き、良く見て、それを思い出しながら家で練習しましょう。
テクニックの練習というより、先生の指揮を再現する練習です。

イメージとしては、先生の秘書さん的な感じですね。先生が言った事を皆に伴奏を通して伝えてあげる、橋渡しをしてあげる。
とても重要な立場ですので、先生と良くコミュニケーションを取りましょう。

全パートを歌えるようにする

合唱ですと、大体ソプラノ、アルト、男声の3パート、もしくはソプラノ、アルト、テノール、バスの4パートに分かれる事が多いと思います。
伴奏が一通り弾けるようになったら、全部の声部を歌って弾けるようにしましょう。

今はどこの声部がメロディーを歌っているのか
どこの声部がきっかけでフレーズが始まるのか
声部によって、息継ぎ(ブレス)をしている場所

全部把握しましょう。
特にブレスがどこにあるかが重要です。

頭の中で、3~4つの声部全部が聞こえてくるようになったら最高ですね。
バッハを弾いている方は分かるかもしれませんが、頭の中で色々なメロディーが聞こえて把握できている状態を作りましょう。
簡単な曲で例えるなら、かえるの合唱を輪唱で歌った時のように、どのタイミングで入った声部でも、全て聞き取れると良いですね。

息継ぎ(ブレス)の緩み、揺らぎを作る

合唱の伴奏では特に、息継ぎ(ブレス)に気をつけましょう。
各声部でブレスの場所が違ったり、全員で同じ場所でブレスしたりと、あっちこっちでブレスがあります。

ピアノソロだと、フレーズとフレーズの間にちょっとした間のようなものがありますが、それに比べると歌のブレスはもっと大きいです。

伴奏の場合、そのブレスの間を埋めてあげる作業が必要になってきます。
歌と一緒にブレスをしてしまうと、間が空きすぎてしまって、ぶつ切りに聞こえてしまうことがあります。
そうならない為に、少し音楽を緩めて、自転車のハンドルのブレーキを少しだけ握ってスピードを緩めてあげるイメージです。完全にブレーキを握って自転車を止めてしまうと、音楽も完全に止まってしまいますので気を付けましょう。

緩める、というとあまりイメージできないかもしませんが、簡単に言うなら、少しテンポをゆっくりとしてブレスしやすいように緩めてあげることです。

ブレスの後の入り方も大事です。これに関しては、歌とピアノの反応の違いに関係があるので、次の項目をみてください。

歌の反応が遅いことを知る

歌はピアノと違い、発声して音や声になるまでに少し時間がかかります。ピアノは鍵盤を触ると同時に音が出るので時差がありません。
その特性を知っていると、歌が入るの遅いなあと感じることがなくなると思います。

特に出だしや、フレーズの初めの箇所は、注意が必要です。
突進して入らずに、ほんのちょっとだけ余裕をもって入ると歌と合うはずです。
練習の時に良く良く聞いて、タイミングを微調整しましょう。

ブレスの後の入り方ですが、歌もピアノも全員でスパっと入る箇所には特に気を付けましょう。
ここは指揮者を良く見て全員で呼吸を合わせて入る箇所です。ですが、ピアノが鳴る反応の方が歌が入る反応よりも早いので、気を付けるポイントです。
歌は声になるまでに時間がかかります。合唱ですと何十人もいるのでなおさら反応が遅いです。自分が感じているより少し余裕をもって、歌の気持ちになって入ると丁度良いでしょう。

視野を広くもとう

伴奏者は、指揮者、ピアノの楽譜、合唱の皆を交互に見ないとなりません。目線がとても忙しいです。
そして色んな事を見て、弾いて、考えて、感じて、微調整して、と頭の中も忙しいです。

一つのことに集中できないので、常に視野を広くもち、何があっても対応できる余裕があるといいですね。

その為に自分の演奏はまず完璧にしておきましょう。

伴奏者の頭の中

伴奏者の頭の中がどうなっているか、伴奏がどれだけ大変なことをやっているのでしょう。

【指揮の合図】
指揮者が出だしの合図を出すタイミングをじーーーーっと見る。
~いつ入るんだろう
~あ、まだ楽譜の準備が整ってない!
~空調で楽譜が飛びそう、どうしよう。。。
~この曲4拍子だけど、指揮の前振りって何拍だっけ?
~アイコンタクトできてないのに始まっちゃった!

慣れない生徒さんだと緊張して間違える可能性があるので、出だしはとても緊張感があります。
ソロと違って、自分のタイミングで始めれない緊張感ですね。

【前奏】
~えっ、こんなテンポだっけ?指揮いつもと違くない?
~このまま弾いたら、歌はいれるのかなあ、遅く(速く)するべきかなあ、どうしよう
~もういいや、自分の速さで弾こう!

自分の思っていた速さと違う速さで指揮者が始めたら、とても焦ります。どうにかして自分のペースに持っていくか、指揮者に合わせるか葛藤があります。

【歌が入る】
~良かった、少しピアノが歌で消されるからちょっとくらい間違えても大丈夫かな
~あれ、テノールやっぱり音外してる、少しテノールのメロディー強く弾いてあげようかな
~ちょっとバス!どんどん速くしないでよ、左手と合わなくなっちゃう
~アルトさん安定してるなあ、さすが!
~ソプラノ、あ、あの人いつも高音のところで伸ばしすぎてるけど、やっぱりやったよ。。。テンポ少しゆっくりするかあ
~いつも先生に注意されて合わないところ、大丈夫かなあ、皆気を付けて!ピアノ良く聞いて!強めに出してあげよう


などなど、各箇所でテンポや音量、タイミングを微調整してます。
本当に縁の下の力持ちですね。

伴奏者は忙しい

伴奏者は本当に忙しいです。
指揮者にも合唱にも誰もわかってもらえない大変なことをを一人でやっています。伴奏者の大変さ、そして素晴らしいことをやっていることを誇りに感じましょう。
微調整が成功した時の喜びは、自分一人しか分からないので、一人でひそっと喜びをかみしめて、伴奏の楽しみを味わってもらえたらと思います。